トモダチ作戦

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"Facebookを利用した街の活性化策を検討してほしい。” 北陸の山田市長(仮称)から依頼された時は、依頼内容が正直理解できなかった。

当時は200名程度のIT会社を経営していたので、市長としては相談できる相手としてはピッタリだと思ったんだろう。 ”まあ、検討ぐらいならお手伝いしますけど。” 同じITでもまったく畑違いな分野だが、そのことを説明する気力も情熱も、ITに疎い市長の前では消え失せる。 断る説明に相当なエネルギーが必要なことから、仕事を受けることになる。

ソーシャルメディアの活用を標榜する怪しげなコンサルタントが跋扈しているけど、その一味の仲間入りか・・・

自嘲気味に自治体の関係者を招集する。

”市長がFacebookに興味があるようで、市政にも活用できる方法を検討してくれないかと依頼を受けまして・・・”

関係者に対して主旨説明を一通り終えると、沈黙が支配する。参加者は自分が所属するセクションの仕事の増加を懸念し、どのように話が展開するのか疑心暗鬼。

”まあ、今回は顔あわせってことで。次回から真面目な検討会にして、初回は軽く情報交換しましょう。Facebook使ってます?”

”個人的には使ってますよ。ただ仕事では情報漏えいの観点から、一切使ってません。”

”個人のメールアドレスも配布されていないのに、Facebookの導入は時期尚早なのでは?”

”他の自治体の先進的事例をベースに、導入できる部分だけを提言してみては?”

”市長が県職員だった当時の同期が、隣の市長になったんですけど、その市長自らがFacebookを使いこなしているみたいですよ。”

”今回の件も対抗心からか・・・それならまず、山田市長自らがFacebookで市政に対する思いを情報発信するべきでは?”

”市長は演説でも何言っているか分からないのに、気の利いた文章書けるのかな?”

”ここだけの話、市民からのメールも代筆させて返信させてるんだぜ。そりゃ、期待するほうが無理ってもんだ。”

”東京出張の時、銀座のクラブのホステスとは、携帯メールでやり取りしてるぜ。絵文字も使えるって自慢してたもん。”

”そう言えば昔、武田市長、市長室のパソコンでこっそりエロサイト閲覧して、ウイルスに感染して大騒ぎになったな。”

”ウチの市長、パソコンできるんだ!市長にFacebookは無料の出会い系サイトだって説明したら、結構使いこなすんじゃないの?”

”雇用促進系の予算を観光振興のNPOにつけて、若い女の子雇ってもらって、市長にアドバイザーとして派遣してもらおうぜ。”

”賛成!”、”賛成!”

意外なことに、初回から実質的に何をするかの空気感が醸成される。

これからは検討会を数回開催し、形式要件を整え、市長が喜ぶような提言に纏めるだけだ。

仕事の95%は終わったも同然、余計な仕事は増えなかったと一堂の顔色は明るい。

初回の検討会で痛感したことは、全く新しい世界を創出することは、今回の招集メンバーでは無理だという結論だった。

誰を仲間にすべきか途方に暮れていると、馴染みの寿司屋で大きな声が。

うん、彼ならいいかも。市長の子飼の若手地方議員だ。

市長が引退したら、支持基盤を禅譲してもらおうと勝手に妄想している野心家だ。

まめに市長と面会し、市井の情報提供を怠らないし、市井の情報にも通じ、敵も少ない。

適度に間抜けなトコロが、いい雰囲気を醸し出してる。

”市長から難しい仕事依頼されちゃった。今流行りのFacebook!ちょっと手伝って欲しいんだけど。"

アルコールで判断力を失った彼の脳は、2合の熱燗を追加することでYesと答えを出した。

”検討会にしちゃうと、答えを出さなければならないので、市長を交えた私的な勉強会にしましょう。明日また連絡します。”

”市長の勉強会に参加する。”

ことだけを脳に刻ませその夜は解散する。

後日、市長を交えて議論すること数回。

良かったことは、Facebookは手段に過ぎず、達成したい政策目標が何なのかという本質的な議論を展開できたことだろう。

・街のにぎわいを取り戻すとはどういう状態なのか?

・地方自治におけるマクロ政策とは何なのか?

について、深く考える機会になったようだ。

因みに、その彼と市長を交え議論すること数回、編み出した政策が”トモダチ作戦”。

作戦としてはスゴク単純。

工場の誘致やニュータウンの建設で、新規の定住人口を増加させることは政策的にリスクがある。

観光資源の新規開発で交流人口を増加させるのも財政難で厳しい。

じゃあ、どうするか?

新規では無く、リピートオーダーに着眼すればイイ。リピート率を向上させれば、交流人口は増える!

市への訪問をリピートする人の動機は何なのか?その分析が市の未来だ!

早速サンプル調査した結果、市長が驚いたのは、コロンブスの卵的な発見だろう。

市長は豊かな自然等の雰囲気が気に入って、観光客はリピートしていると考えいた。

だが実際は市に何度も訪問する人の動機の多くが、友達がいるからだった。

豊かな自然なんて、日本中どこにでもあるし、旨い飯は大都会が一番だ。

ただ、友達がいるから年に何回か遊びに来るのだった。

”こ、これだ。Facebookで地方と都会を繋ぎ、市民一人一人が友達を増やしていけば訪れる人も多くなる。”

”交流人口を増加させるのは、資源開発や施設整備では無く、市民の意識改革だったんだ!”

”市民がタブレットを駆使して、Facebookで友達の数を増やせば、交流人口は増え、街のにぎわいは蘇る!”

”市民がFacebookを利用できるように人材開発することこそが、市の発展の核だったんだ!”

市長の目はランランと輝き、観光協会や商工会を通じた、社会主義的な政策を推進する。

”市外の人間とゴハンを食べよう!”そして"Facebookで500人と繋がろう!”

”人生楽しもうぜ!”そして”一手間かけてその一瞬の写真をアップ!”

”それが市の魅力に繋がり、人を呼ぶ!”

政策効果がどうだったのかは、まだ語るまい。

ただ副次的な効果だったのが、市民同士の連携が促進され、市政と市民の距離感が縮まったことだ。

結果として山田市長の再選が実現しなかったのは(それもゴミ問題で!)、人生のあやか・・・

大人の世界を垣間見ることになった一件ではあるが、

”一般人の山田さん、また今年の夏遊びに行きますね!”

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平山雅一

株式会社BFT 代表取締役