自衛隊はメニュー作りにも妥協しない。目黒にある(って知ってましたか?) 航空自衛隊基地訪問記

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 9月17日、私は普段はなかなか入ることのできないであろう航空自衛隊の目黒基地に取材に行くことができた。目黒という都会の中心地に、一般人は普通立ち入ることのできない場所があるということに少々圧倒されながらも、私たちは取材に出向いた。取材の主な目的としては、目黒基地が密かに、進めてきた「さんまカレー」なるものの正体を知るためであった。軍隊といえばカレー、私たちの年代からすると、そのようなイメージはあまり濃くはないが、どうやらカレーは自衛隊の方々にとって、カレーが出る日は何曜日であるといった日にちの認識のために用いられたりと、伝統的な食べ物であるようだ。しかしどういう流れでさんまの使用が決定されたのだろうか?弱い存在でも、力を合わせれば大きな敵にも勝てるという大義名分を表すため?でも自衛隊がそんな弱そうなことを言ってていいのか?まあとりあえず行ってみようか。そのようなことを考えながら、私は目黒の地に足を運んだ。
 さて、いきなりさんまカレーの核心に触れる前に、せっかくこのような貴重な体験をさせていただいたのだから、そこで伺った、普段はあまり気にすることのない自衛隊に関することを書きたいと思う。私が行った目黒基地には、統合の幹部学校と陸上、海上、そして航空の四つの幹部学校がある。航空 自衛隊創立と同時期に幹部学校も創立されたので、幹部学校そのものは今年で創立60周年を迎えるようだ。しかし幹部学校は最初から目黒にあったわけではなく、もともとは浜松にあり、その後長らく市ヶ谷に位置していたが、防衛省の市ヶ谷移転を機に、目黒に移転してきたのだという。目黒基地は、安政4年(1857)に徳川幕府が砲薬製造所を設立したのが始まりで、その後、海軍技術研究所を経て、現技術研究本部艦艇装備研究所の設置及び防衛研究所の霞ヶ関からの移転と、幹部学校が移転され、今の形になったという。とそんな目黒基地も、今年で20周年目を迎えた 。
 では幹部学校とはいったい何をする学校なのだろうか?簡潔に言うならば、陸・海・航の自衛隊の部隊の上級指揮官あるいは幕僚の養成・教育を各レベルに応じて行う学校である。基本的な組織構成としては、学校長、そしてお話をしていただいた副校長の所属する学校本部、教官の在籍する教育部、航空研究センター、そして噂のさんまカレーの試作や、隊員の衣食住サービスに関する業務を行う業務部で構成されている。ちなみに、さんまカレーは幹部学校業務部で作られているものであるので、目黒基地所属の方は陸・海・航空どこに所属していても食べることができる。このような仕組みの整った環境で、元々は陸上自衛隊員、海上自衛隊員、あるいは航空自衛隊員として数年の実務経験を経た人々が改めて統合され、指揮官に必要な要素を学んでいくのがこの幹部学校である。だいたいここまでくる人々は40代前半が多く、そしてやはり、女性 より男性のほうが圧倒的に多いのが現状らしい。しかし、当初の目標であった、幹部の5%を女性にするという目標は達成されたらしく、今後もどんどん女性の雇用を進めていく方針だという。
 次に具体的な幹部学校でのプログラムであるが、それは自衛隊に私たちが抱きがちな肉体的な訓練ではなく、むしろ頭脳を駆使したものが多いようだ。防衛作戦を遂行するための戦略論、複雑な国際情勢に対する理解、時には過去の戦士に関する勉強も行われている。これらを学ぶことによって、これから先起こり得る出来事に対して、的確な状況判断と指揮能力が身に付く。ここでは、実践的な任務と同時に、仕事に直結する大切な知識も学ぶことに重きを置いていた。
  「自衛隊は任務だけをこなす機関ではなく、ある意味では隊員を育成する機関でもあるから、実践と学習を両立することが、いざというときに対応できるような優秀な人材を作ることにつながる。」
副校長が、真剣な面持ちで言った言葉だった。自分たちが恵まれた環境にあると自覚し、それを最大限活かそうとする姿勢がうかがえた対談であった。
 それでは、 話の節々にでてきた「さんまカレー」の話に入ろう。幹部学校が60周年を迎え、目黒基地も20周年を迎えた。それは先述したとおりである。しかし正直に言おう。こんなことを一般庶民の誰が知っていただろうか?公の立場にいる者は、大抵の場合、そこで行われていることを、市民 に知ってもらいたい、もっと関心を持ってほしい、と考えるのが常であろうが、それは残念ながら達成されていないことが多い。しかし、今回、航空自衛隊目黒基地のみなさんは、20周年をせっかく迎えたのだから、できることならなにかインパクトのあるものを作り、自衛隊をより身近な存在としたいという狙いがあったようだ。そしてきっかけとしてもう一つ。2010年に他基地のカレーが新聞でおいしいと評判となったことである。それならうちも、名物的なカレーを作ることが可能なのではないか。そして考え付いたのが、そう、「さんまカレー」。なぜ?目黒といえばさんま じゃないか。さんまに高級な料理は合わなかったという、「目黒のさんま」という落語もある。元々あった肉カレーを牛筋にしたところ、カロリー半分のヘルシーさが女性隊員にウケた。それならば、もっとヘルシーな魚もいけるのではないか。そんなことを考えながら、試行錯誤し、試作すること実に5回。自衛隊のシェフが意外と厳しいということに、私はどことなく温かみや微笑ましさを感じた。しかし5回試作しても、まだ改良の余地はあるらしい。実際に、私達はさんまカレーを食べさせてもらったのだが、一言で感想を言うと、カレーだった。確かに魚の風味は感じる。しかし大部分はただのカレーであった。焼いたさんまをほぐしてカレーにいれるという形のカレーだったので、さんまを感じさせるものが少なかったのかもしれない。業務部長いわく、「魚」というイメージを全面に出さなかったのは、魚嫌いな隊員を考慮してとのこと。一般人へのインパクトも大事だが、日常的に食べるのはやはり隊員のみなさん。そこを無視しては本末転倒。そこからは、さんまカレーの試食に立ち会った皆さんで様々な改善策を出し合った。さんまフレークを使ったらいいのではないか。むしろターゲットを一般人に絞り込んで、秋刀魚を丸々載せてしまおう。そもそも自衛隊名物にするのなら、秋刀魚は正直大事ではないのでは?などなど、刺激的な提案がたくさん飛び交った。「仕事のプロってすごい。」率直に感じた私の意見は、そんな単純なことだった。

    ここまであえて、軽いタッチで情報をお伝えしてきたが、やはり自衛隊という存在が一般人に周知されることはとても大切で、なぜなら、最近頻発しており、どことなく不安に感じつつある「災害」という脅威が実際に私たちの身に降りかかってきたときに、真っ先に安堵をもたらす存在となってくれるのが、他でもない自衛隊であるからである。みなさんは、今回紹介した目黒基地が、一般人の避難所としても存在していることをご存じだろうか。確かに自衛隊というのは、お国のお膝元という印象もないわけではなく、近寄りがたい存在なのかもしれない。しかし、その印象を一歩踏み越えてみると、見えてくるのは意外と笑顔の多い自衛隊の方々かもしれない。一方が認識の幅を広めようと躍起になっても、受け手に興味関心がないのなら、それはいつまでも達成されない。それなら一度、私達一般人から歩み寄ってみようではないか。命を守ってくれる存在がそこにいることに、みなさんと一緒に知ることができたら、それは何か大きな一歩を踏み出したことになると、私は考える。

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アリオーゾ
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