魅惑の地方レポート~網走牛乳の父編~

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網走を訪れたのはもちろん初めてのことだった。 刑務所と 「網が走る」ほどの吹雪、という勝手なイメージから、ヒートテックとダウンの完全防備で女満別空港に降り立った。

出迎えに来て下さったのは、市内で有名なアイスクリーム会社を経営する「リスの森」の高田会長御年82 歳。「リスの森」は都内を はじめ遠く九州からも催事依頼がある程人気のジェラート屋さんである。

金のボタンをあしらった真っ赤なニットカーディガンにタータンチェックのキャスケット、ピンクのシャツという、私の網走イメージから対極と思えるメルヘンないでたち、成功者特有の肌の輝きで空港内にひときわオーラを放っていた。

高田さんの 「城」に向かう道中、車内から見る華曇りの空とまだ凍った広大な湖、雪が溶けてふきのとうが無数に目を出している森の斜面と力強い芝生の色に、すっかり自分の中の網走感は払拭され、ヨーロッパの田舎を訪れているかのようなワクワク感で胸を躍らせていた。

店に到着し、ショーケースの中の色とりどりのジェラートに目が釘付けになった。

あれも食べ ろこれも食べろと勧めて下さる会長に昔から大好きな祖父の家に遊びに来ているような感覚を呼び起こされ、とても居心地が良かった。絶品のジェラートを頂きながら、今回の我々の渡道の目的のひとつでもある、高田さんのインタビューが始まった。

ジェラート屋を立ち上げようと思い立ったのはなんと60歳の時。趣味のゴルフで訪れたフィリピンで食べたジェラートのおいしさに衝撃を受け、それまで経営していた廃棄物管理会社を弟さんに譲り、ジェラートの世界に飛び立ったという。 ジェラートは一般的に、約60パーセントが牛乳からできている。高田さんがこだわり抜いて使用しているのは、同じく網走市内にある楠目 (くすめ)牧場で生産される、その名も「あばしり牛乳」。 ジャージー牛とホルスタインとを程よくブレンドし、65°の低温殺菌で30分という、他に類を見ないコストと手間を掛けその栄養と口当たりを守り続けている、一度飲むと他製品に代えられなくなるという極上の牛乳である。

ここからが問題で、あろうことに今後その牛乳が手に入らなくなる恐れがあるというのだ。 あばしり牛乳なくしてリスの森ジェラートは生まれない。

その理由をリサーチすべく、我々はあばしり牛乳の待つ楠目牧場へと先を急いだ。

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